さて、
今日は、
よくある質問の一つ
「TDR」について。
TDRってどんな測定?
TDRは、
オシロスコープを用いて測定する
測定手法の一種で、
「time domain reflectometry」
の略だそうである。
字面だけ見ても
分からないと思うので、
以下、解説します。
TDRは、
オシロスコープに接続した
DUT
(Device Under Test:被測定物)
からの反射波を
測定する手法です。
具体的には、
図1のように、
オシロスコープから
ステップ電圧
(実際はパルス波形)
を入力します。
そして、
図1のMonitor point
に現れる電圧波形を
測定します。
※
T: DUT上の終端での反射係数
D: ケーブルとDUTの間の反射係数
$Z_{0}$: DUT上の伝送路の特性インピーダンス
TDRから得られる情報
TDRで分かる
接続先の情報は、
大きく分類して以下の3つ。
- 終端の特性
- 伝送路の特性インピーダンス
- 伝送路上の特性インピーダンスの変化点
終端の特性
DUT上で、
終端部分以外の
反射がない場合は、
終端の反射が
ダイレクトに
測定されますので、
その波形から、
終端の特性を知ることが
できます。
解放終端の場合は、
$Z_{T}=∞$
となりますので、
反射係数:T=1となり、
測定される反射波の振幅:$a_{0}T$は、
入社波と同じ振幅の$a_{0}$
となります。(つまり全反射)
※ $$反射係数: T=\frac{Z_{T}-Z_{0}}{Z_{T}+Z_{0}}$$
また、
終端がGNDにshortしている
場合、
すなわち、
図3のように
$Z_{T}=0$であれば、
T=-1となり、
マイナスの
全反射が返ってきます。
以上のように、
終端抵抗の情報が、
TDRの波形から得られることは
分かると思います。
DUTの伝送路の特性インピーダンス
それでは、
伝送路の特性インピーダンス
についてはどうでしょうか。
伝送路の特性は、
図4の楕円で示した部分に
現れます。
楕円の部分に
反射波がみえた場合は、
その反射波の振幅$V_{x}$は、
$$V_{x}=\frac{Z_{0}-50}{50+Z_{0}}*a_{0}$$・・・①
となります。
反射がなければ、
$V_{x}=0$なので、
①の式から
$Z_{0}=Z_{D}=50$
であることが
分かります。
※ ケーブルの特性インピーダンスは、
通常50ohmなので、$Z_{D}=50$
そして、
振幅が$a_{0}+V_{x}$となる期間から、
伝送路の長さを
知ることができます。
($V_{x}=0$のときは、
図4の楕円の部分から、
同軸ケーブルの
いわゆる電気長
を引き算します。)
伝送路上のインピーダンス変化点
伝送路上にインピーダンスの
変化点(Viaやコネクタ等)があると、
その都度、
反射波が返ってきます。
その反射波も、
図4の楕円の部分に
現れますので、
これらの情報も
TDRから得ることができます。
TDRの最もポピュラーな使い方は、基板上の配線チェック
以上のような特徴を
利用して、
PCB配線上に断線もしくはショートが
ないか?
といったチェックをするのが、
最もポピュラーな
使い方だと思います。
例えば、
配線上に
断線がある場合、
伝送路上に
インピーダンス: ∞の
箇所が生じますので、
図5のように、
所定の終端からの
反射波の前に、
全反射が返ってきます。
インピーダンスミスマッチ検出にも有効
TDRは、
DUT(PCB)上の配線の
インピーダンスのミスマッチを
見つけるのにも、
有効です。
高速信号のISIについて、
最も影響のあるのは、
配線上の
インピーダンスのミスマッチです。
PCB上の信号のISIに
悪化が見られた場合
PCB材質の改良に走るのを
よく見かけますが、
PCB材質による誘電損などは、
イコライザで復元可能な
ものです。
信号のISIに悪化が見られる場合、
まずは、
TDRでインピーダンスのミスマッチ
を検出することがとても
有効です。
以上、ご参考になれば幸いです。