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アニールの意味と原理。ギブスの自由エネルギーの観点で解説!

ギブスの自由エネルギーと原子配列
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「アニール」って
聞いたことありますか?
モノづくりの現場にいると、
時々聞くことになります。

拙者は、学生の頃、
しょっちゅうアニール
していました。



アニール(anneal)とは

今日は、
「アニール」について。
アニールというのは、
ある材料を普段より
高い温度に上げ、
できるだけゆっくり
放熱して、
元の温度に戻すこと
によって、
元の状態より特性
(電気伝導度や結晶状態など)
を改善することを言います。

温度が高いとエントロピーが大きくなり、
温度が低いと内部エネルギーが小さくなる

なぜ、温度を上げて、
戻すだけで、
材料の特性が
良くなるのか?
それを考えるカギは、
ギブスの
自由エネルギーにあります。

自然界というものは、
放っておくと、
エネルギーのより低い状態へ
と移り変わっていきます。
材料の持つエネルギーは、
ギブスの自由エネルギーで
表されます。

F = U - TS

F: ギブスの自由エネルギー
U: 内部エネルギー
T: 温度
S: エントロピー

温度が低い状態(例えばT=0)
であれば、
F≒U
となり、
ギブスの自由エネルギー:Fは、
内部エネルギー:Uが小さいほど、
小さくなります。
温度が高い状態(U << TS)であれば、
F≒-TS
となり、
ギブスの自由エネルギー: Fは、
Sが大きいほど
小さくなります。

つまり、温度が低い状態では、
Uが最も小さい状態へ
材料の状態は移行して行き、
温度が高い状態では、
Sの最も大きい状態へ移行します。
その方が(自由)エネルギーが
小さくなるからである。

Uが小さい状態というのは、
材料を構成する原子が
規則正しく並ぶ状態である。
Sが大きい状態というのは、
材料の原子の配置が非常に
乱雑になった状態である。

結果として、
温度が低いと材料の原子は
規則正しく並び、
温度が高いと材料の原子は
乱雑になる。
水の温度が低くなると、
氷として結晶化し、
温度が上がると水蒸気
として水分子が乱雑に
動き回るのをイメージ
してもらうと
分かりやすい
かもしれない。

準安定平衡状態とアニール

さて、図1は、
縦軸がギブスの自由エネルギー。
横軸が、原子(分子)配置である。

ギブスの自由エネルギーと原子配列図1 ギブスの自由エネルギーと原子配列

Aの状態は、Bの状態より
自由エネルギーが高い状態にある。
なので、
Aの状態にある材料は放っておけば、
Bの状態に遷移し、
そこに留まることとなる。
ただし、
Eの状態は、
Bよりエネルギーが低いので、
さらに放っておけば、
Eの状態になるかというと、
そうではない。
BからEに直接遷移はできない。
Bは、自由エネルギーの谷
となっており、
Bから他の状態に
遷移するには、
外部からエネルギーを
与えなければ、
他の状態に移行しない
のである。
これを準安定平衡状態という。
この準安定平衡状態にある
物質をさらに
自由エネルギーの低い状態
に移行させるには、
Bの状態にある材料に
(熱)エネルギーを与え、
Cの状態に移行させ、
そこから放熱すること
によって、Eの状態へ
移行させる。
この時、
できるだけゆっくり
放熱することがコツである。
急激に放熱すると、
Dの状態に留まり、
そこから抜け出すための
(熱)エネルギーが
なくなるからである。

このように、状態Bで安定(準安定平衡)
した材料に、熱エネルギーを与え、
ゆっくりと放熱することによって、
その他の準安定平衡状態(D)を
乗り越え、
状態Eへ移行させる行為を
「アニール」というのである。
(状態Eは、
状態Bよりも原子配列が
規則的であり、
特性も基本的に良くなります。)



参考にさせていただいたサイト:
http://www.ensinger.jp/blog-eng/archives/28

http://www.numse.nagoya-u.ac.jp/P6/kobashi/img/file3.pdf#search=%27%E8%87%AA%E7%94%B1%E3%82%A8%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC+%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%95%27

ABOUT ME
ヘーシロー。
地方大卒。エンジニア歴20年近いオジ。
最初の職場はブラック。
長年の忍耐を経て、
ブラック脱出を決意。
就職先の影も形もない状況で浪人する。
ブラック脱出後、メーカーや商社で、
自身の英語と技術知識に自信を持つ。
リスクをとっても
ブラックからは脱出すべきと確信。
リスクをとる個人が増えることを願い、
技術記事やキャリア形成、
英語について、
思うところを発信する。
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